原子力発電のメリットとデメリットについてわかりやすく解説 過去の痛い経験から学ぶべき

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東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年以上が経過し、原子力発電所の再稼働の議論がされるようになってきました。原子力発電所を再稼働させるかどうかの議論や、今後のエネルギー問題を考えるうえでも、原子力発電のメリットやデメリットについてはよく知っておく必要があります。そこで原子力発電のメリットやデメリットについて、わかりやすく解説していきたいと思います。

原子力発電のデメリット

原子力発電はエネルギーの安定供給に役立ったり、省スペース・省燃料でも発電できるなどのメリットもありますが、無視できないデメリットが多く存在します。

原子力発電の今後の運用がどのようになるかは、現在検討段階ではありますが、原子力発電のリスクや課題に関してはよく理解しておく必要があります。

ということで、原子力発電の代表的なデメリットについて見ていきましょう。

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事故が発生すると深刻な被害を生む

原子力発電とは、ウランの核分裂反応を利用して熱エネルギーを得る発電方法で、原理は原子力爆弾と同じです。

ウランが核分裂をする時には、熱とともにさまざまな放射性物質が作られます。

そのため何かの拍子で起きた事故や自然災害により、閉じ込められていた大量の放射性物質が原子炉から外へ漏れ出してしまうことがあります。

原子力発電から放射能が漏れてしまうと、放射能を浴びた放射性物質から放射線を受けてしまうため(外部被ばく)、原子炉の修復作業を行う作業員でさえも原子炉に近づけなくなります。

また、空気中や土壌の放射性物質から水や食べ物へと放射能が流れ込み、それを口にすることで内部被ばくを起こす危険性も生じます。

被ばくは健康にとって危機的な被害を生じさせ、被ばく量や長期的な影響によりがんや白血病となるリスクが高まります。

東京電力福島第一原子力発電所の事故は今も記憶に新しいところですが、事故が発生した場合、原子力発電はその他の方式の発電所とは比べものにならないほどの深刻な被害が生じました。

またその責任の所在についても、誰も責任が取れないということが露呈されました。

このように誰も責任が取れないうえ、被害の回復が非常に難しいものを扱うことに対するリスクを負うという最大のデメリットを、けっして忘れてはなりません。

放射性廃棄物が発生する

原子力発電では、ウランを核分裂反応させる過程で使用済み核燃料が発生します。

使用済み核燃料の95%は再利用可能ですが、再利用できない残りの5%は「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれる廃液です。

この廃液は放射能は外に漏れださないようガラスで固められ(ガラス固化体)るわけですが、この高レベル放射性廃棄物が非常に問題なのです。

ガラス固化体となった高レベル放射性廃棄物の処分方法の1つに、地下300メートル以上の深い安定した岩盤に閉じ込める「地層処分」という方法が提唱されています。

これは単純に、地上で保管するよりもリスクが低いと考えられているからです。

ところが、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体を受け入れる自治体が日本にはなく最終処分場がありません。

原子力発電で出た処理しきれず、安全なレベルに到達するには数万年もかかるとされる高レベル放射性廃棄物の処理問題が未解決な限り、原発の稼働を認めるのは無責任としか言いようがないでしょう。

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コストが高い

原発は建設費用に莫大なお金がかかります。

この建設費に数千億円かかり、さらに立地自治体への補助金や反対世論を抑えるための広報費などといった、莫大なコストをかけて作られます。

また、東電福島原発事故以降、安全対策に関する費用が追加され、安全対策費用だけでも原発1機につき数千億円必要といわれています。

老朽化により原発を廃炉にする場合にも、莫大な費用がかかります。

その費用は同程度の出力を生む火力発電所と比べると、10倍以上もの解体費用がかかります。

さらに、原子力発電は熱効率の悪い発電方法であるため、「発生した熱のうちどれくらいが電気となるか」という数値が、火力発電がおよそ40%であるのに対して原発は33~34%と低く、発生した熱の多くが温排水として捨てられてしまっています。

ただ発電コストに関して言うと、原発は火力発電所の2~4分の1のコストで、同じ電力量の発電ができます。

しかし建設にかかる費用や廃炉にかかる費用を考えた場合、いくら発電コストが低いと言えど、トータルで考えるとどうなのでしょうね。

原子力発電のメリット

デメリットに対して原子力発電のメリットとしては、次のようなものがあると考えられています。

燃料を安定して入手できる

原子力発電の燃料となるウランは、少量でたくさんの発電を行なうことができ、政情の安定したオーストラリアやカナダなどから入手することができるため、燃料の安定確保が可能です。

発電時に二酸化炭素を排出しない

核分裂のエネルギーを利用する原子力発電では、発電時に二酸化炭素(CO2)が排出されません。そのため地球温暖化対策の1つとして有効とされています。

また燃料も少ない量の輸送で済むため、環境負荷が少ないとされています。

省スペース・省燃料で発電効率が高い

原子力発電は他の発電方法と比べて、少ない燃料で大きな電力を得られるため、発電のために必要な発電所の面積が小さくて済むとされています。

まとめ

原子力発電はエネルギー資源の乏しい日本にとって少ない燃料で発電できるため、安定確保が可能で輸送も少なくて済み、発電時に二酸化炭素を排出しないことからも地球温暖化対策としても有効と考えらえています。

しかし、一旦大きな事故が起これば大惨事に見舞われ、その被害は広範囲・長期にわたるということは、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故が示しています。

また、何万年も放射能を放出し続ける放射性廃棄物の処分方法問題も解決していません。

このような状況の中で原子力発電所を稼働させるということは、あまりにも無責任と言えるのではないでしょうか。

これから先の未来を生きる子どもたちに、これ以上の負の遺産を押し付けないためにも、そして唯一の被爆国である日本という歴史からも、できることなら原子力発電の再稼働はしないでもらいたい。

原子力発電を持たない先進国もたくさんあります。今後はそのような国から学び、どうすれば原発を稼働させずに電力の供給が賄えるかを考え解決していくべきだと思います。

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