フリーランスと個人事業主の違いってわかる?法律・税務の観点から知っておくべき基本的な認識
働き方の多様化が進む中で「フリーランス」と「個人事業主」という言葉をよく耳にするようになった印象です。
SNSやメディアでは、これらの言葉が互いに置き換え可能なものとして使われることもありますが、実は両者には明確な違いがあります。
特に法律や税務の観点からみれば、意外に明らかとなります。
この記事では、フリーランスと個人事業主の違いを法的・税務的な側面からお伝えします。
学生さんは、自分の働き方の選択肢、独立を考える会社員は、基礎知識として参考にしてもらえば幸いです。
もくじ
フリーランスとは?
フリーランスとは、特定の会社や組織に属さず、自分の専門スキルや知識を活かして、複数の企業やクライアントと契約を結びながら働く人のことを指します。
フリーランスという言葉は「自由な働き方」を意味する働き方のスタイルを表す概念であり、法律上の明確な定義はありません。
フリーランスの主な特徴としては以下が挙げられます。
- 特定の企業に所属せず、独立して働く
- 複数のクライアントと契約を結ぶことが多い
- 業務内容や労働時間を自分で決められる自由度の高さ
- プロジェクトベースの仕事が中心
- デザイナー、ライター、プログラマー、コンサルタントなど専門性の高い職種が多い
個人事業主とは?
一方、個人事業主は税法上の区分であり、法人ではなく個人として事業を行う人を指します。
個人事業主は税務署に「個人事業の開業届出書」を提出することで正式に認められます。
個人事業主の主な特徴は以下の通りです。
- 税務署に開業届を提出している
- 事業所得として確定申告を行う義務がある
- 青色申告や白色申告などの税務上の選択肢がある
- 事業規模や業種に関わらず、個人で事業を営む人すべてが対象になりうる
- 小売店主、農家、職人、士業など様々な業種が含まれる
法的定義の有無
個人事業主は、所得税法などの税法に基づいた明確な定義があります。
例えば、所得税法第27条では、事業所得について「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得」と定義しています。
一方、フリーランスは法律上の明確な定義がなく、働き方を表す一般的な概念に過ぎません。
ただし、2021年3月に厚生労働省は「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を策定し、フリーランスの定義や保護に関する考え方が示しています。
令和6年10月に改訂されましたが、このガイドラインでは、フリーランスを「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指す」と定義しています。
開業届と税務処理
個人事業主として活動する場合、原則として事業開始から1ヶ月以内に税務署へ「個人事業の開業届出書」を提出する必要があります。
個人事業主は事業所得として確定申告を行い、収入から必要経費を差し引いた所得に対して税金を支払います。
また、青色申告で確定申告する手続きをすれば、最大65万円の控除、赤字の繰越控除などの特典は、非常に大きなメリットです。
それだけでなく、事業用の経費を適切に計上することで、節税効果も期待できます。
一方、フリーランスは必ずしも開業届を提出しているとは限りません。
開業届を出さなくても、特に罰則はないのが現状です。
開業した年の翌年に確定申告すれば、開業届が提出されたのと同等に扱われますが、ぶっちゃけ、出しといたほうがいいですよ・・・。
開業届を出さずに活動している場合、収入は「雑所得」として扱われ、青色申告の恩恵を受けられないというデメリットがあります。
また、事業規模が拡大した際に、開業届を提出していないと不正確な税務処理になるリスクもあります。
開業届を出していれば、
- 小規模企業共済に加入が可能
- 屋号で口座開設できる
ということもあるので、面倒臭がらずに開業届は出した方がよいです。
めっちゃ簡単なんですけどね。
事業形態・働き方の実務的違い
個人事業主には様々な業種が含まれます。
小売店の店主、飲食店経営者、農家、職人、弁護士や税理士などの士業、美容師など、一人で事業を営む人々は基本的にすべて個人事業主に分類されます。
一方、フリーランスは一般的に、ITエンジニア、Webデザイナー、ライター、カメラマン、コンサルタント、翻訳者など、特定の専門スキルを持って働く人々を指すことが多いです。
ゆえに、フリーランスという言葉には、ある程度、職種や働き方に関するキーワードともいえます。
働く環境と契約の実態
個人事業主は自らの事業としてサービスや商品を提供するため、基本的には独立性が高く、自分の裁量で事業運営を行います。
例えば、小売店の経営者は、仕入れ、価格設定、営業時間などを自分で決定します。
フリーランスの場合は、クライアントとの関係性が重要です。
多くの場合、業務委託契約や請負契約を結び、プロジェクトごとに成果物を納品します。
まあ、個人事業主だからといって、請け負う業務内容によっては、業務委託契約や請負契約は無視できないのが現場の実態ですので、そこは勘違いしないようにしてくださいませ。
ただ、フリーランスの場合は、特定のクライアントに依存していたり、クライアントの指示に従って働いていたりすることもあり、この場合「偽装フリーランス」として雇用関係が疑われる可能性もあります。
前述のフリーランスガイドラインでは、発注事業者がフリーランスに対して一方的に不利な契約を強いることを禁止し、適正な契約関係を築くよう促しています。
すでにフリーランスとして働いている場合は、身を守るためにもガイドラインに一度は目を通しておいた方が得策です。
社会的・経済的な位置づけ
総務省「労働力調査」によると、2022年(令和4)におけるは個人事業主(自営業主・家族従業者数)は648万人となっています。
※自営業主・家族従業者数って書いたけど、官公庁と民間で用語を統一してほしいね・・・
一方、フリーランスについては、クラウドソーシングでお馴染みのランサーズが実施した「フリーランス実態調査 2021」では、1,670万人となっており労働人口の24%を占めていると伝えています。
この数字と割合、かなり大きい印象を持ったのではないでしょうか。
ただ、個人事業主とフリーランスは、明確な集計基準がないといえるため、数字を単純に合算、差し引きして多いとか少ないとか判断する意味はないかもしれませんが、もはや個の力で働くことは珍しいことではないとだけは断言できそうです。
今後の働き方のトレンド
コロナ禍を経て、テレワークやリモートワークが普及し、働き方の多様化が一層進んでいます。
企業側も、必要なスキルを持つ人材を柔軟に活用するために、フリーランスとの協業を積極的に検討するようになってきました。
また、副業・兼業の解禁や、フリーランス保護に向けた法整備の動きなど、フリーランスや個人事業主として働きやすい環境が整いつつあります。
今後は、会社員とフリーランスの境界がさらに曖昧になり、複数の働き方を組み合わせるパラレルキャリアが一般化していくことも予想されます。
ちなみにフリーランス実態調査では、フリーランスを4つのタイプにわけており、個人的にも非常に納得したので、改めて紹介しておきます。
アナタはどのタイプがお好き?
- 副業系すきまワーカー:26.3%(439万人)
常時雇用されているが、副業としてフリーランスの仕事をこなすワーカー - 複業系パラレルワーカー:22.3%(373万人)
雇用形態に関係なく2社以上の企業と契約ベースで仕事をこなすワーカー - 自由業系フリーワーカー:18.4%(308万人)
特定の勤務先はないが独立したプロフェッショナル - 自営業系独立オーナー:33.0%(551万人)
個人事業主・法人経営者で、1人で経営をしているオーナー
補足
個人事業主でもフリーランスでも、法的・税務的な違いを理解した上で、自分のライフスタイルや将来のキャリアプランに合った働き方を選択することが重要です。
フリーランスとして活動する場合でも、開業届を提出して個人事業主として適切な税務処理を行うことで、節税効果や社会的信用の向上などのメリットが得られます。
また、将来的に事業を拡大したい場合は、最初から適切な手続きを踏んでおくことが得策といえます。
一方で、企業に所属しながら副業としてフリーランス活動を始める場合などは、開業届を提出するタイミングや確定申告の方法について、専門家に相談することをおすすめします。
いずれにせよ、スキルや専門性を高め、複数の収入源を持つことで、変化の激しい現代社会においても柔軟に対応できる力を身につけていくことが、フリーランスや個人事業主の生きる道といってよいです。
老後も無視できないですからね。
まとめ
フリーランスと個人事業主の主な違いをまとめると、
- 法的定義
個人事業主は税法上の区分であり明確な定義があるが、フリーランスは働き方の概念で法的な明確な定義はない - 手続き
個人事業主は開業届の提出が原則必要だが、フリーランスは必ずしも提出していない場合がある - 税務処理
個人事業主は事業所得として申告し青色申告のメリットを受けられるが、開業届を出していないフリーランスは雑所得となることが多い - 対象業種
個人事業主はあらゆる業種が対象だが、フリーランスは専門性の高い職種を指す傾向がある - 契約形態
個人事業主は独立性が高いが、フリーランスはクライアントとの関係性によって実態が異なる場合もある
と締めくくっておきます。