光熱費ゼロも夢じゃないGX志向型住宅とは?環境と家計にやさしい未来の住まいのメリット・デメリット
環境問題やエネルギー価格の高騰を背景に、持続可能な住宅への関心が高まっています。
その中でも注目を集めているのが、「GX志向型住宅」です。
GX(グリーントランスフォーメーション、以下「GX」とする)とは、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを指しますが、住宅分野では、
- 再生可能エネルギーの活用
- 省エネ性能の向上
によって、環境負荷の低減と経済的メリットを両立する住まいを意味します。
GX志向型住宅では、太陽光発電や蓄電池、高断熱・高気密設計などを取り入れることで、光熱費の大幅削減も可能になり、「光熱費ゼロ」の実現性も高くなってきています。
さらに、国や自治体の補助金制度を活用することで、初期費用の負担を軽減しながら導入できる点も大きな魅力です。
そこで今回は、GX志向型住宅の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説するとともに、補助金や税制優遇の活用方法についても紹介します。
もくじ
GX志向型住宅の特徴
具体的には、以下のような技術や設計が取り入れられています。
再生可能エネルギーの活用
GX志向型住宅の大きな特徴は、太陽光発電や蓄電池の導入です。
自家発電した電力を日常的に使用できますし、余剰電力は売電も可能で、さらにV2H(VehicletoHome)を活用すれば、EV(電気自動車)を家庭用電源として利用し、停電時の備えにもなります。
省エネ性能の向上(高断熱・高気密設計)
建物の断熱性と気密性を高めることで、冷暖房のエネルギー消費を最小限に抑えることができます。
具体的には、高性能断熱材やトリプルガラス窓の採用が一般的です。
ゆえに夏は涼しく冬は暖かい、快適な室内環境が実現し、エアコンなどの使用を抑えられます。
エネルギーマネジメントの導入
HEMS(HomeEnergyManagementSystem)などのスマート技術を活用し、電力の使用状況を可視化・最適化します。
たとえば、家電やエアコンを自動制御し、無駄なエネルギー消費を抑えることが可能です。
AI技術を活用したシステムでは、天気予報と連動して発電や蓄電の管理を行うものもあります。
環境配慮型の建材・工法
住宅の建築時にも環境負荷を抑える工夫がされています。
たとえば、カーボンニュートラルな建材(低炭素コンクリートやFSC認証の木材)や、施工時の廃棄物を減らすプレカット工法が採用されることが増えています。
GX志向型住宅のメリット
改めて、GX志向型住宅のメリットについて、特に重要なポイントを挙げてみます。
光熱費を大幅に削減できる
太陽光発電を導入すれば、昼間の電力を自家発電でまかない、余った電力を売電することが可能です。
さらに、蓄電池を活用すれば、夜間や天候の悪い日も購入電力を抑えられます。
電気料金の高騰が続く中、GX志向型住宅は長期的に大きな節約効果をもたらします。
停電時の安心感がある
災害時に電力供給がストップしても、蓄電池やV2H(電気自動車からの給電)を活用すれば、最低限の電力を確保できます。
冷蔵庫や照明、スマートフォンの充電など、ライフラインを維持できるため、災害に強い家としてのメリットも大きいです。
快適な住環境が得られる
高断熱・高気密設計のGX志向型住宅は、夏は涼しく、冬は暖かいのが特徴。
エアコンの効率も良くなり、室温のムラが少ないため、ヒートショックのリスク軽減にもつながります。
また、結露を防ぎ、カビやダニの発生を抑えられるため、健康的な住環境が維持できます。
資産価値が向上する
GX志向型住宅は、今後の住宅市場において評価が高まりやすいです。
特に、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たす住宅は、売却時に高く評価される傾向があります。
また、省エネ性能が優れた住宅は、住宅ローンの優遇や固定資産税の軽減措置を受けられる場合もあります。
補助金や税制優遇が活用できる
国や自治体からの補助金を活用すれば、GX志向型住宅の導入コストを抑えることが可能です。
太陽光発電や蓄電池、高性能断熱材の導入に対する補助金があり、住宅ローン減税や固定資産税の軽減といった税制優遇も受けられます。
参照
脱炭素志向型住宅の導入支援事業(子育てグリーン住宅支援事業)について | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
GX志向型住宅のデメリット・注意点
GX志向型住宅の導入を検討する際には、デメリットや注意すべき点もあります。
初期コストが高い
GX志向型住宅は、太陽光発電や蓄電池、高断熱仕様などの設備・建材を導入するため、一般的な住宅よりも初期費用が高くなる傾向があります。
ただし、補助金や長期的な光熱費の削減を考慮すると、投資回収が可能なケースも多いため、長期的な視点での検討が必要です。
補助金頼みの計画はリスクがある
国や自治体の補助金制度は、年度ごとの予算に左右されるため、突然の変更や終了の可能性があります。
補助金が前提の資金計画を立てていると、予定外の負担が発生することもあるため、最新情報をこまめに確認し、補助金なしでも無理のない資金計画を立てることが重要です。
設備のメンテナンスが必要
GX志向型住宅に導入される設備(太陽光発電・蓄電池・HEMSなど)は、定期的なメンテナンスが必要です。
特に蓄電池は寿命があり、10~15年程度で交換が必要になるため、長期的な維持コストを考慮しておくべきです。
すべての家庭でコスト回収が見込めるわけではない
太陽光発電を導入した場合、設置地域の日照条件によっては、想定していた発電量が得られず、コスト回収が予定よりも長期化することがあります。
また、売電価格の変動によっては、収益性が下がる可能性もあります。
施工会社の選定が重要
GX志向型住宅の設計・施工には、高い専門性が求められます。
未経験の業者に依頼すると、十分な断熱・気密性能が確保されず、期待した省エネ効果が得られない可能性があります。
施工実績が豊富なハウスメーカーや工務店を選ぶことが大切です。
GX志向型住宅に使える優遇制度
GX志向型住宅を建てる際には、前述した環境省の脱炭素志向型住宅の導入支援事業(子育てグリーン住宅支援事業)だけでなく、自治体や税の優遇制度を活用することで、コスト負担を大幅に軽減できます。
国の補助金制度
- ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金
一定の省エネ性能を満たした住宅に対し、数十万円~100万円超の補助を受けられる。 - 住宅省エネ2025キャンペーン(予定)
断熱性向上や高効率給湯器の導入等の住宅省エネ化を支援制度。
参考:住宅省エネ2024キャンペーン【公式】
自治体独自の支援策
都道府県・市町村ごとに、太陽光発電や蓄電池の設置補助を実施している場合があるため、各自治体の公式サイトで最新情報をチェックしてみてください。
税制優遇
- 住宅ローン減税:省エネ性能の高い住宅ほど控除額が優遇される。
- 固定資産税の軽減:一定期間、固定資産税の減額措置が適用されることがある。
電力会社の売電制度・VPP(仮想発電所)関連支援
- 余剰電力を売電することで収入を得られる。
- VPP(仮想発電所)に参加し、電力需給調整の報酬を受ける制度も拡大中。
GX志向型住宅を賢く選ぶポイント
GX志向型住宅の建築については、慎重な計画と適切な選択が重要です。
どの程度のGX要素を取り入れるかを決める
すべての最新技術を導入するのではなく、費用対効果を考慮しながら、必要な設備を選択することが重要です。
欲張ると軽く予算オーバーしてしまう可能性も。
ハウスメーカー・工務店の選び方
ZEHや省エネ住宅の施工実績が豊富な会社を選びたいところです。
さらに、補助金申請のサポートが充実している業者が望ましいといえます。
建築事例も相談の際に紹介してくれると、より安心できると考えます。
長期的なコストとリターンを計算する
初期費用だけでなく、光熱費の削減額や補助金を含めたトータルコストを試算すると、いわゆるコスパの観点から評価ができます。
試算する場合は、収入の変化やメンテナンス費用も無視できません。
補助金を活用するタイミングを見極める
補助金は申請受付期間があるため、スケジュールを事前に確認するか、ハウスメーカーや工務店から、アドバイスや最新情報が得られることが望ましいです。
国や自治体の補助金事業は予算に上限があり、想定より申し込みが多ければ、早期に受付終了する場合があるため、早めの申請が望ましいといえます。
が、補助金ありきの資金計画は、建築計画や家計の破綻リスクも大きくなるため、補助金が活かせない場合の案も持っておくことをおすすめします。
まとめ
GX志向型住宅は、
- 環境負荷の低減と家計の負担軽減を両立
- 光熱費ゼロも実現可能
ということで、注目されています。
一方で、初期コストの高さやメンテナンスの必要性など、注意すべき点もあります。
しかし、補助金や税制優遇を上手に活用すれば、負担を抑えながら導入することが可能ですが、暮らし始めてからの家計の収支が重要なため、金融機関などでシミュレーションを行うことをおすすめします。
GX志向型住宅に興味関心があるならば、ライフスタイルや予算に合った提案をしてもらえる、経験豊富なハウスメーカーや工務店選びがカギを握るため、プランや見積もり比較などで十分に検討する時間を持ちたいところです。