誤嚥性肺炎の再発予防のための2つの注意点 飲み込む力をつけるための簡単トレーニング法
高齢者にとって肺炎は命に関わるとても恐い病気です。その多くは食べ物や唾液が誤って気管に入ることで起こる「誤嚥性肺炎」によって起こるとされています。誤嚥性肺炎を予防するために、日々の生活の中で注意すべきことや簡単にできる工夫、飲み込む力を鍛えるための簡単トレーニング法などについてお伝えします。
誤嚥性肺炎の予防
「誤嚥性肺炎」とは、食べ物や唾液などが食道を通らずに気管に入ってしまい、その食物や唾液に含まれた細菌やウイルスが肺に入ることで起こる肺炎のことです。
高齢者になると嚥下(飲み込む)力が弱くなり、そのため気管に物が入りこむ誤嚥が起こりやすくなるため、誤嚥性肺炎が何度も再発してしまうことがあります。そしてこのことが、高齢者が亡くなる多くの原因となっています。
高齢者は嚥下機能が低下し、すぐにむせてしまったり、物を飲み込みづらくなったりするため、日頃から配慮すべき点がいくつかあります。
口の中を清潔に保つ
誤嚥性肺炎になるのを避けるための大切なことの1つとして、口の中を清潔に保っておくということがあげられます。
口の中は常に適度な温度と湿度が保たれているため、細菌にとってとても居心地のよい環境となっています。
そのため歯磨きやうがいなどを怠ると、すぐに細菌が口内で繁殖してしまうのです。
特に高齢者の多くは唾液の量が減少してくるため、義歯の手入れが不十分などからも細菌が繁殖しやすい条件が揃っています。
細菌の繁殖を防ぐための工夫としては、次のようなことがあげられます。
- 起床したら口をすすぐ
- 食事のあとは歯磨きをする(舌ブラシで舌の掃除をするのも効果的)
- 歯科医院で定期検診を受ける
口腔は肺や胃腸の入り口なので、細菌を繁殖させない様に注意し、肺への菌の流入を防ぐことが誤嚥性肺炎の予防には重要となります。
食べ方を工夫する
誤嚥を防ぐためには、食事のときに以下のような点にも注意をしましょう。
- 食事の際の姿勢を整える:食事の際は、椅子でもベッド上でも、顎を引き前屈みで食事をする
- のどの通りをよくする:食事の前に水分を摂り、のどの通りをよくする
- 少しずつ食べる:一口で食べる量を少なめにして、ゆっくり食べる
- 食事に集中する:食事中の会話・テレビなどはやめる
また、食事の介助をする際には、介助者は次の点に注意をしてください。
- 座って介助する(食べる人の顎が上がらないようにする)
- 飲み込んだことを確認してから、次を差し出す
- 口の中に食べ物があるときに話しかけない
食事内容を工夫する
スムーズに食事をするためには、
食物を噛み砕く→ 噛んだものをまとめて口の奥に送り込む → 嚥下する
というプロセスのどこに問題があるのかを見極め、それに応じた食事内容の配慮が必要となります。
咀嚼に問題がある
食物を上手く噛み砕くことができない場合は、きざむ・軟らかく煮る・押しつぶした状態にすることで、かなり食べやすくなります。
食塊形成に問題がある
噛んだものをまとめることができない場合は、一口大に切る・軟らかい状態にする・とろみをつけることで、食べやすくなります。
細かくきざむと逆にむせやすくなるので、ご注意ください。
嚥下に問題がある
飲み込むときにむせてしまう場合は、軟らかくする・とろみをつけることで、食べやすくなります。
また、口やのどに張り付きやすい食べ物は、飲み込みやすい形に変えるようにしましょう。
- 海苔は佃煮にする
- 薄切りキュウリは千切り・やや厚めに切る
- レタスなどは葉物野菜は巻いて食べる
- お餅やお団子などは小さくちぎる
すぐに流動食や刻み食に切り替えてしまうのではなく、それぞれの状態に合った配慮をし、食事を充分に楽しめるようにすることも大切です。
飲み込む力をつける
飲み込む力を維持するには、唾液を出やすくする必要があります。そのためにも、口やのどを鍛えましょう。
口や喉を鍛える方法としては、次のような方法があります。
- 舌で左右の頬を内側から押す
- 唇を閉じた状態で、歯の表側を舐めるように舌をぐるりと回す
- 口を閉じ、つばを飲み込む動作の途中で3秒間キープする
- 額を手で押しながら、ゆっくり下を向く
また、「嚥下」と「発声」の筋肉はつながっています。話す・歌う・朗読することでも、飲み込む力を鍛えることができます。
まとめ
誤嚥性肺炎を予防するには、口腔内の細菌を増やさないことと、誤嚥を防ぐ工夫をすること、この2点が重要となります。
口腔内の細菌を増やさなためには、日頃から口の中を清潔に保つ工夫をしましょう。
誤嚥を防ぐためには、食べ方や食べ物の形状の工夫、飲み込む力を鍛えるための運動などが有効です。
また、普段から免疫力を高めるためにも、十分な睡眠やバランスの良い食事なども、心がけるようにしましょう。