個人事業主のインボイス制度 10月1日の開始までにやるべきこととスケジュール感について

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10月1日からインボイス制度が実施されます。免税事業者である個人事業主の方は、そろそろどうすべきか決定を迫られているところかと思います。そんなインボイス制度の10月1日実施までに何をやるべきか、自身はどうすればよいのか、スケジュール感も合わせて解説いたします。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、請求書に事業者の登録番号、税率・税額等を記載した「適格請求書(インボイス)」を発行できるようにする制度のことです。インボイスを発行できるようにするには、適格請求書発行事業者登録を行う必要があります。

そこで、個人事業主で免税事業者だった場合、ここでいくつかの問題が生じます。

これまで売上1000万円以下の免税事業者は、これまで仕入れと売上との差額の消費税は納める義務はありませんでした。それでなんとか成り立っていた事業者も多いのですが、インボイス制度を導入するために個人事業主で免税事業者申請をすると消費税事業者となり、いわゆる益税と言われていた消費税の差額分を納めることで収入が減ってしまいます。その他、消費税についての事務処理の負担も増えてしまいます。

であれば、インボイス制度を導入しなければ済むかというと、これがそう簡単ではないのです。

インボイス制度導入後は、インボイスではない請求書に対して、消費税分を税金として会計処理することが認められなくなるのです。そのため、個人事業主など仕事を請け負う側がインボイス制度を導入しないと、取引企業は消費税分も売上に加算されてしまうことになり、余分な税負担が発生してしまうのです。

そうなると、取引企業から消費税分をディスカウントするよう要請されたり、最悪の場合はインボイスを発行できない事業者との取り引きを切られてしまい、事業者は仕事を失いかねないわけです。

まさに免税事業者にとってはデメリットしかないのが、インボイス制度なのです。

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適格請求書発行事業者登録が必要な個人事業主

既に消費税事業者であれば特に悩む必要はありませんが、この場合泣く泣く適格請求書発行事業者登録が必要となる個人事業主は、クライアントから切られて仕事を失うと困るという事業者です。

おそらく多くのフリーランスや個人事業者はこれに該当すると思います。そのため、多くのフリーランスや個人事業主から、インボイス制度の反対の声が上がっていますが、おそらく中止となることはなく、このまま10月1日に制度が実施されるでしょう。

適格請求書発行事業者登録申請書はいつまでに提出すればいい?

ということで、適格請求書発行事業者になるかどうか、悩んでいる人もそろそろ決断をしなくてはならないわけですが、これはいつまでに決定しなければならないのでしょうか。

2023年10月1日からインボイス制度は開始されるのですが、当初は、2023年3月31日までに適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する必要がありました。それが今は延長され、2023年9月30日まで可能となっています。

では、9月30日までに決めればいいのかというと、そういうわけでもないのです。というのも、インボイスには13桁の登録番号を記載する必要があり、その番号を発行してもらう必要があるからです。

現在、登録申請書を提出して13桁の数字を発行してもらうまでに、e-Tax利用で約3週間、書面の場合だと約2カ月掛かることになっています。

そのため、10月1日にインボイスを発行できるようにするには、書面であれば遅くとも2ヶ月前の7月末までに登録申請書を提出する必要があります。

さらに、締め切りが近くなると申請者の数も増えるでしょうから、発行までの時間はさらに長くなることが予測できます。その分を考えたら、少し余裕を見て書面であれば遅くとも3ヶ月前の6月末には提出したほうが良いでしょう。

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消費税簡易課税制度選択届出手続は行うべき?

適格請求書発行事業者の申請をすると決めたなら、「消費税簡易課税制度選択届出手続」についても考える必要があります。この手続きをすることで、消費税の納税を本則課税ではなく簡易課税で処理することが認められ、煩わしい消費税の処理が少なく済みます。

本則課税とは、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を引いた差額を算出する方法です。それに対し、簡易課税とは、仕入れにかかった消費税額とは関係なしに、「みなし仕入率」を掛けることで簡易に消費税が算出できます(業種ごとにみなし仕入率が決められています)。

〈簡易課税のみなし仕入率〉

第一種事業(卸売業):90%
第二種事業(小売業):80%
第三種事業(製造業):70%
第四種事業(飲食店業・その他):60%
第五種事業(金融業・保険業・運輸通信業・飲食店業を除くサービス業):50%
第六種事業(不動産業):40%

みなし仕入率を使った消費税の計算法は、

例えば、第四種事業の場合だとみなし仕入率は60%なので、年間売上が660万円(消費税含む)だった場合、消費税60万円×(100%-60%)=24万円が納めるべき消費税と簡単に計算できます。

※複数事業を運営している場合は、事業の種類ごとに対応したみなし仕入率をかけて消費税額を算出します。

実は2割特例という措置もある

実は3年間の期間限定となりますが、「2割特例」という措置も設けられています。

これはその名の通り3年間の期間限定で、納付税額を2割とする特例です。

ラッキーと思って、この「2割特例」に飛びつくと、卸売業の第一種事業(みなし仕入率90%)などは必要以上の消費税を納めることになりますのでご注意ください。第三種~第六種事業の事業者は、2割特例を利用することで消費税額を抑えられるので、利用しない手はないと思います。

ちなみに、この2割特例を利用する場合は、消費税申告時でも良いそうです。

簡易課税は一度提出すると2年間は変更できません。みなし仕入率を使う簡易課税制度を選択するか、2割特例を利用するか、よく検討して決定するようにしてください。

まとめ

私もフリーランスの免税事業者なのでインボイス制度の導入については悩まされていましたが、大きなクライントもいることなので、適格請求書発行事業者登録を行うことにしました。

そして、消費税に関しては2割特例を利用し、3年間の限定期間中に売上を今よりも伸ばしていきたいと思います。

企業は賃金も上がり、世の中の物価も上昇しつつあります。いま少しずつ停滞していた日本の経済状況も、変化の兆しを見せつつあります。

ピンチはチャンスというように、デメリットに感じるインボイス制度の導入も、バネにして頑張っていきたいと思います。

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