タワーマンションの魅力と落とし穴!宅建士資格所有者が住民・管理会社・不動産会社の視点で書く
都市部を中心に人気を集めているタワーマンション。
その圧倒的な存在感と、高層階から見渡す絶景は、多くの人々を魅了してやみません。
しかし、タワーマンションの魅力は眺望だけでなく、充実した共用施設や手厚いセキュリティなど、快適な暮らしをサポートする様々な要素が詰まっています。
一方で、その構造や規模ゆえの課題も、徐々に出始めているのが実情です。
高額な管理費や修繕積立金、エレベーターの混雑、そして将来的な資産価値の変動リスクなど、購入前には想像していなかった点も少なくありません。
今回は、タワーマンションを住民、管理会社、不動産会社の3つの視点から、宅建士資格所有者が改めて見てみることにします。
もくじ
住民の視点のメリット・デメリット
タワーマンションは、その独特な魅力から多くの人々を惹きつけていますが、実際に住むとなると、様々なメリットとデメリットが存在します。
住民の視点に立って、メリット・デメリットを述べてみます。
メリット
眺望の良さと開放感
タワーマンションの最大の魅力は、やはりその眺望です。
高層階からは、まるで絵画のような美しい景色が広がり、日常を忘れさせてくれるほどの開放感を味わえます。
特に夜景は格別で、都会の煌めきを独り占めできる贅沢さは、他の住まいではなかなか得られません。
また、周囲に遮る建物がないため、日当たりや風通しも良好です。
明るく開放的な空間は、心身ともにリフレッシュさせてくれることを期待できます。
このような眺望の良さは、タワーマンションの資産価値にも大きく影響し、実際に眺望が良い高層階ほど人気が高く、価格も高くなる傾向があります。
充実した共用施設とサービス
ジム、ラウンジ、ゲストルームなど、まるで高級ホテルのような共用施設が充実している物件が多くあります。
これらの施設は、住民同士の交流を促したり、日々の暮らしを豊かにしたりする役割を果たします。
また、コンシェルジュサービスもタワーマンションならではの魅力で、宅配便の受け取りやクリーニングの取り次ぎなど、コンシェルジュの存在は、忙しい現代人にとって非常に心強いものです。
子育て世帯向けのキッズルームや、パーティールームを備えているマンションもあり、ライフスタイルに合わせて快適に過ごすことができます。
防犯性の高さと安心感
24時間有人管理やオートロック、防犯カメラなど、セキュリティ対策が充実している物件がほとんどです。
外部からの侵入リスクが低いため、安心して暮らすことができるため、特にファミリー層にとって、子どもの安全は最優先事項ですから、子育て世代から高い支持を得ています。
デメリット
管理費・修繕積立金が高額
共用施設の維持や管理に多額の費用がかかるため、毎月の管理費が高額になる傾向があります。
また、将来的な大規模修繕に備えて、修繕積立金も毎月積み立てる必要があります。
特にタワーマンションは、一般的なマンションに比べて修繕費用が高額になることが予想されるため、修繕積立金の増額リスクも頭に入れておかなけばなりません。
エレベーター待ちと混雑問題
居住者が多いため、朝の通勤時間帯や帰宅時間帯にはエレベーターが混雑することがあります。
特に高層階向けエレベーターが無い場合、待ち時間が長くなることも想定しておくことが求められます。
また、停電や点検などでエレベーターが停止した場合には、階段での移動を余儀なくされることもあり、高層階は大変です。
資産価値の変動リスク
供給過多になると価格が下落する可能性があります。
築年数が経つと、設備の老朽化やデザインの陳腐化などによって、資産価値が下がるのは、タワマンだからといって変わることはありません。
また、意外なことに一般的なマンションに比べて、売却に時間がかかる傾向が高いです。
管理会社・管理組合視点のメリット・デメリット
タワーマンションの管理は、一般的なマンションとは異なる複雑さと規模を伴います。
管理の実情と、そのメリット・デメリットについて、お伝えします。
メリット
管理費収入の安定性
タワーマンションは戸数が多いため、管理費の収入が安定しやすいというメリットがあります。
マンションのグレードに比例して管理費も設定されることが多く、管理の委託を受ければ安定した収益を確保することができます。
長期的な修繕計画や共用施設の維持管理のためにも、管理費の安定が前提です。
スケールメリットによるコストダウン
大規模なタワーマンションでは、設備維持費や各種契約費用をスケールメリットによって抑えることができます。
例えば、エレベーターや給排水設備のメンテナンス、清掃業務などを一括契約することで、維持管理の単価を下げることが可能です。
多くの住民が利用する共用施設の維持管理においても、スケールメリットを活かした効率的な運営ができます。
ブランド価値の維持が可能
良好な管理体制は、タワーマンションのブランド価値を維持・向上させる重要な要素です。
特に高級マンションの場合、管理の質が物件の評価に大きく影響します。
清潔で清掃の行き届いた共用スペース、丁寧なコンシェルジュサービス、高機能なセキュリティ対策などは、住民の満足度を高めるだけでなく、物件の魅力を高め、資産価値の維持にもつながります。
デメリット
合意形成が難しい
住民の数が多ければ意見も多様です。
それゆえに合意形成が難しいという課題があります。
特に大規模修繕や管理費の見直しなど、重要な意思決定を行う際には、時間と労力を要することが少なくありません。
また、分譲住戸と賃貸住戸が混在している場合、所有者と居住者の立場の違いから意見が対立することもあります。
修繕計画と費用の負担が大きい
エレベーター、外壁、給排水設備など、大規模な修繕が必要となる設備が多く、修繕費用も高額になる傾向があります。
将来的な修繕費用の高騰や、修繕積立金の不足など、長期的な視点での資金計画を余儀なくされれば、住民の負担が増加します。
空き住戸・投資用住戸の管理が難しい
タワーマンションを投資用として購入するケースも多く、空き住戸や所有者不明の住戸、外国人オーナーの増加による流動性の滞留なども予想されます。
これらの住戸の管理は、管理会社にとって大きな負担となります。
特に海外投資家が所有している場合、コミュニケーションが取りにくく、管理意識の低さなどから、管理上の問題が住民へと波及することは避けたいところです。
管理会社や管理組合の活動状況も、タワマン選びには大きく影響します。
不動産会社の視点のメリット・デメリット
タワーマンションは、仲介や販売を手掛ける不動産会社にとっても魅力的な商品である一方、特有の課題も抱えがちです。
その課題も含めて、不動産会社の視点から、タワーマンションのメリット・デメリットについて考えてみます。
メリット
高価格帯で利益率が良い
タワーマンションは、一般的なマンションに比べて高価格帯であるため、1件あたりの仲介手数料や利益が大きくなります。
都心の高級ブランドマンションは、高額な取引が期待できるため、不動産会社にとって魅力的な商品です。
また、タワーマンションは人気が高く、需要が安定しているため、販売しやすいというメリットもあります。
投資需要もあるため販売機会が多い
眺望や共用施設の充実度などから、投資用物件としても人気があります。
海外投資家や富裕層からの需要は根強く、一定の販売機会が見込めます。
都心部のタワーマンションは、資産価値が比較的安定しているため、投資対象として魅力的です。
管理体制の良さをアピールしやすい
充実した共用施設や手厚い管理体制が整っている物件が多く、これらの要素をセールスポイントとしてアピールすることができます。
購入希望者にとって、管理体制の良さは安心材料となり、購入意欲を高める要因となります。
デメリット
価格下落リスクと売却難易度の上昇
これから供給過多になると、価格が下落するリスクが付いて回ります。
築年数の経過によって、設備の老朽化やデザインの陳腐化なども重なることから、資産価値が下がることも考えられます。
一般的なマンションに比べて、購入希望者の負担が大きく、成約が難しくなることも売却に時間がかかる理由のひとつです。
金融機関の融資基準が厳しくなることがある
物件の築年数や立地によっては、住宅ローンの審査が厳しくなることがあります。
特に、低所得層の購入希望者は、返済能力の観点から融資を受けることが難しくなる可能性は高いです。
金融機関によっては、タワーマンションの将来的な資産価値の変動リスクを考慮するため、融資額を抑える傾向があります。
まとめ
タワーマンションの魅力と課題を、住民、管理会社、不動産会社の3つの視点からお伝えしました。
それぞれの立場から見たメリット・デメリットを整理することで、タワーマンションの選択の参考となれば幸いです。
- 眺望や共用施設の充実度など、住まいの質を重視する人
- セキュリティの高さや利便性を求めるファミリー層
- 安定した賃貸収入や資産価値の維持を期待する投資家
一方で、以下のような人は、タワーマンションでの暮らしに不向きかもしれません。
- 管理費や修繕積立金などの経済的な負担を避けたい人
- エレベーターの待ち時間や混雑をストレスに感じる人
- 将来的な資産価値の変動リスクを避けたい人
ここでは触れませんでしたが、高齢者は住みにくい可能性も含まれています。
相続の観点からも、これから課題が見つかる可能性もあります。
タワーマンションを選ぶ際は、入念に、かつ慎重に検討してください。