【感想】H.D.ソローの『森の生活 ウォールデン』を30年ぶりに再読 2度ともう読まないと思った理由

※広告

H.D.ソローという人の書いた『森の生活 ウォールデン』という古典的名著があります。ナチュラリストのバイブルとでも言うような本で、タイトルだけは知っている人も多いのではないでしょうか。そんな『森の生活 ウォールデン』を30年ぶりに再読してみました。漠然と残っているイメージが今回再読したことで、よりはっきりと蘇りました。そんな『森の生活』を読み終えた感想をお伝えします。そして私がもう「2度と読まないだろう」と感じた理由もお伝えします。

H.D.ソローと『森の生活 ウォールデン』

H.D.ソローは正しくはヘンリー・デイヴィッド・ソローと言い、アメリカの超絶主義の作家です。

超絶主義とは、19世紀の中頃にアメリカ北東部のニューイングランド地方で起こった観念論哲学の運動で、カントやコールリッジ、シェリング、東洋思想などの影響を受け、汎神論、直覚主義、神秘主義、ユニテリアニズムなどの哲学を主張した人たちのこと。

と、文字だけ読むと、「なんのこっちゃ?」という感じかもしれませんが、まぁ、そういった哲学的な作家でソローという人が19世紀の頃にいまして、そのソローが書いた代表作が『森の生活 ウォールデン』です。

『森の生活 ウォールデン』は、ソロー自身がウォールデン湖畔の森の中にある小屋で、自給自足の生活を送った2年2か月の体験記をもとにした物語です。1854年に出版されました。

一応、小説として扱われていますが、内容は体験記のようでいて、表現は時に詩的であり、またソローの哲学もふんだんに盛り込まれたといった内容といった、一風変ったものです。しかし、そのなかで描かれた思想は、後の時代の詩人や作家にも大きな影響を与え、今日でも古典的名著として読み継がれています。

広告

『森の生活 ウォールデン』のあらすじ

『森の生活 ウォールデン』の大まかなストーリーは、

アメリカ・マサチューセッツ州コンコードにあるウォールデン湖畔の森に、自ら建てた小屋で暮らし自給自足な生活をはじめた若き頃のソロー。

マメなどの作物を育て、頭脳労働は一切行わない手を動かす労働のみで暮らすことを試みます。

最低限必要なものだけで暮らす極シンプルな生活を実践するなかで、自然の美しさや素晴らしさを再発見し、人々がいかに生活を複雑化することで自らの労苦を生み出し、不幸を招いているかという考えに至る。

というものです。

人は不要なものを買うために必死で働き、そのための労働に時間を費やし疲れ果てて死んでいく…。

私達の現代生活もまさにそのような状態で、そのことに今から170年前に気づいたソロー。

その思想に、「もっと人間らしく暮らしたい」「自然の多い田舎でシンプルに暮らしたい」といった考えを持つ人たちから大きな支持を得ています。

言わばナチュラリストのためのバイブルのような本なのです。

とは言え、なかなか難解な『森の生活』

今なお読み継がれている『森の生活 ウォールデン』ですが、意外と読んでみるとなかなか難解で、途中で挫折する人も少なくないようです。

と言うのも、非常に哲学的な箇所もありますし、詩的表現も多く、現代の日本とは大きくかけ離れた昔のしかもアメリカの地方の話ですから、文化的なイメージも湧きづらいのでしょう。そこに対訳ということもあります。

ソローの『森の生活』は様々な出版社から、訳者も異なる版が複数出版されています。

私は今回、岩波文庫の飯田実さんが翻訳された『森の生活 ウォールデン』(上下巻)を読みました。30年前に読んだ『森の生活』は1冊にまとまっていたので(既に手元にない)、おそらく違う出版社のものだったと思います。

今回読んだ岩波文庫版で言うと、上巻は少し読みづらいですが、下巻に入ってくるとかなり読みやすくなります。なので、頑張ってコツコツと読み進めてみてほしいと思います。

広告

【感想】『森の生活 ウォールデン』を読み終えて

今回30年ぶりに『森の生活 ウォールデン』を読み終えてみて感じたのは、やはり初めて読んだときと同様に読みづらいなと言うことでした(笑)。

しかし、時間を掛けてゆっくりと読み進めていくとで、ソローが伝えたかったことやウォールデンの風景などが目に浮かんでくるようになります。

時間のない人がぱぱっと読む本ではなく、少し心に余裕がある時にゆっくり読むことで、すーっと頭に入ってくる。そんな小説です。イマジネーションを働かせるのが大切かと。

それでも、前半部分はなかなか頭に入りづらいので(やたら哲学の引用などが多い)、雰囲気だけをつかみつつ読み進めていくと、後半になるに連れわりとすんなりと頭に入ってくるようになります。内容的なものもあると思うのですが。

私は昔から田舎に憧れを持つ都市生活者で、今もいつか田舎暮らしがしたいと考えている者です。

二十歳の頃に絶望から都会を離れ、独り田舎で自給自足の生活をしようと考えたこともあり、そんなことがまだ心に残っているうちに、この『森の生活 ウォールデン』に出会いました。

自分が思っているようなことを実際にやった人がいたんだと。

今はもう自給自足までしようとは思いませんが、それでも田舎で野菜などは作るものの、なるべくシンプルで自給的な暮らしをしてみたいと考えています。

実際、ソローの頃と今とでは時代も違いすぎますが、それでも何を大事に生きるかという部分では、今も昔も変わらない共通した価値観はあると思います。

そのソローのスピリットみたいなものをこの小説から汲み取り、田舎暮らしをしたいと思う人が自分に適した暮らしを各自築いていけたらと思います。

まとめ

30年ぶりにソローの『森の生活 ウォールデン』を読んでみて、自分が大事に思うことについて、いま一度考える良い機会になりました。

と同時に、もう自分が『森の生活 ウォールデン』を読むことはないだろうなと思いました。

それくらい、この本に書かれている核となる部分は、自分のなかでしっかり受け止めることができたからです。

もしも何かしら『森の生活』のテイストが懐かしくなったら、次は漫画版でも良いかもしれない。

これなら手元においては時々眺め、懐かしい友のことを思い出すようにページをめくるのは楽しそうです。

参考になったらシェアしてくださいね!