個人事業主として開業届の提出時や、確定申告書を記入する際に「職業欄」に何を書くべきか、戸惑った経験はありませんか?
「個人事業主じゃダメなの?」「ライターって職業?職種?」といった素朴な疑問が頭をよぎるのも当然です。
さらに副業・複業が当たり前になった現代では、一人でいくつもの肩書を持つケースも少なくありません。
本記事では、そうした背景を踏まえながら、「職業」「職種」「業種」の違いを明確にし、開業届や確定申告の職業欄でどのように記載すべきかを具体的に解説していきます。
業種・職種・職業の違い
まず初めに、似て非なる3つの用語「業種」「職種」「職業」について整理しておきましょう。
これらは日常会話でも混同されやすい概念ですが、それぞれの意味を正確に理解しておくことが、開業時や申告時の記入において非常に役立ちます。
業種とは?事業の分野を示すカテゴリ
業種とは「どのような事業を行っているか」を表す分類で、総務省が定める「日本標準産業分類」に基づいて定義されています。
例えば、農業、建設業、小売業、情報通信業などが該当し、個人事業主の場合も自身の事業内容に応じてこの分類から選ぶ必要があります。
なお、産業分類は以下のように細分化されています。
- 大分類(例:G 情報通信業)
- 中分類(例:39 インターネット附随サービス業)
- 小分類(例:3911 ウェブコンテンツ提供業)
開業届に記載する際には、中分類または小分類レベルの表現が参考になります。
実際の届出書類では「インターネットサービス業」「Webコンテンツ制作業」など、少し一般的な語句で記載してもお咎めはありません。
業種分類は、後の確定申告や青色申告承認申請、帳簿付けのスタイルにも影響するため、しかり確認しておきましょう。
職種とは?仕事内容を表す言葉
一方、職種は「その人が具体的にどのような業務を行っているか」に焦点を当てた概念です。
企業の求人票に「営業職」「経理職」「企画職」などと記載されるように、職種は担当業務を区分するための名称になります。
個人事業主であれば、「ウェブライター」「Webデザイナー」「動画編集者」など、実際の活動内容を表す言葉が職種です。
気を付けたいところとしては、官公庁によって明確に定められた「職種分類」が存在せず、業界独自の呼称でまかり通っているケース。
例:Vtuber、フロントエンドエンジニア、コンテンツマーケター、サウンドクリエイター、カスタマーサクセス
想定できる公的分類もありますが、書類に記載する際は、実態に即してわかりやすく書くことが基本になります。
もし、迷うようなことがあれば、提出先に問い合わせると確実です。
職業とは?社会的な立場を示す表現
職業とは、税務署など公的な書類で用いられる「生業」の表現であり、社会的な立場を示します。
たとえば「会社員」「公務員」「学生」「自営業」などです。
個人事業主の場合、基本的には「自営業」や「自由業」といった表現が用いられることが多く、より具体的に記す場合は「Webライター」などの職種も併記するケースがあります。
「職業」としての記載内容は、各書類の目的によっても微妙に異なるため、次章で解説する「開業届」と「確定申告書」での書き方の違いも押さえておくと安心です。
これらの言葉は似ていても、対象とする範囲や視点が異なるため、使い分けに留意しましょう。
開業届や確定申告の職業欄
ここでは、開業届と確定申告書、それぞれの職業欄に記載する内容の違いや注意点について詳しく見ていきます。
書類の目的や取り扱う官公庁が異なるため、求められる記載レベルや記載例にも差があります。
開業届に記載する職業の書き方
開業届は、個人事業の開始を税務署に届け出る書類であり、「職業欄」は自由記述となっています。
「〇〇業」といった表現が一般的で、たとえば「Webライター業」「ネット物販業」「イラスト制作業」など、自分の業務内容に即した書き方が望まれます。
希望の職業でも構いませんが、将来的に事業所得として認められる活動であることが前提です。
たとえば「インフルエンサー業」や「アフィリエイト広告業」など、近年増えている業態でも問題ありません。
ただし、「ユーチューバー」「Vtuber」「ライバー」などについては、「動画投稿広告業」など補足的に説明を加えた記載がベターです。
確定申告書における職業欄の考え方
確定申告書にも「職業欄」がありますが、こちらも自由記述となっており、具体的な職種名や業種名を記載するのが一般的です。
開業届と異なり、すでに1年の実績がある場合が多いため、実態に沿った表現を心がけましょう。
たとえば、副業でライター業を行っていた場合は「Webライター」でも構いませんし、本業とあわせて「会社員・副業ライター」と併記しても問題ありません。
整合性を保つことで、青色申告の承認申請や帳簿との整合性もスムーズになります。
職業欄に迷ったときの考え方
「やりたいことはあるけれど、まだ勉強中」「とりあえずフリーランスとして開業したい」という状況で、職業欄に何を書けばよいのか迷うことは少なくありません。
しかし、開業届・確定申告ともに、必ずしも今すぐ売上がある仕事でなければ記載できないというわけではないため、方向性が決まっていればそのまま記載しても構わないのです。
具体的に記載できる職業の例
- Webライター
- Webデザイナー
- 動画編集者
- ハンドメイド作家
- SNS運用代行
- アフィリエイト運営
これらはすべて、スキル習得中であっても事業活動として捉えられる職種といえます。
後から職業が変わっても問題ない理由
開業届に記載した職業は、事業の成長や方向転換に応じて変更しても特に問題はありません。
変更届を出す必要は基本的にありませんが、屋号の変更や青色申告の内容によっては届出が必要なケースもあります。
開業届は控えを持っておく
開業届を提出したあと、そのまま安心してしまいがちですが、実務上とても重要なのが「控えの保管」です。
この控えは、銀行口座の開設や各種申請の際に必要となることがあるため、必ず控えをもらいましょう。
控えが必要となる主な場面
- 屋号付きの銀行口座を開設する
- 小規模企業共済に加入する
- インボイス登録番号の取得を申請する
- 自治体の創業支援制度を利用する
再発行が必要となったときは、こちらの記事をどうぞ。
↓
開業届の控えを紛失!再発行は可能?屋号で銀行口座開設や融資のために再発行手続きの方法
まとめ
今回は、個人事業主としての開業や確定申告にあたり、「職業欄」に何を書くべきかについて、業種・職種・職業の違いから具体的な記入例まで幅広く解説しました。
最初は迷って当然ですが、大切なのは「自分がどのような事業で収益を上げたいか」という意思を持ち、それを言語化することです。
職業欄の記入はその第一歩であり、将来の活動にも大きく関わる部分です。
この記事を通じて、少しでも不安や疑問が軽減され、自信をもって書類が提出できるようになれば幸いです。

