どうするインボイス?令和5年度の4つの改正ポイントを解説 負担軽減措置や登録希望日など
令和5年10月1日から開始されるインボイス制度。令和5年度税制改革によりインボイス制度についても4点の改正が行われました。中でも免税事業者にとっては大きな意味のある「2割特例」を中心に解説します。またインボイス制度に登録した売上の少ない事業者が、今後どのような方向性を目指すべきかについてもお伝えします。
もくじ
令和5年度税制改正に伴いインボイス制度にも改正事項が
令和5年10月1日から、ついに消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されます。
このインボイスを発行できるようになるためには、インボイス発行事業者の登録を行い「事業番号」をもらう必要があります。
しかしこのインボイス制度は、多くの消費税免税業者にとってメリットは何ひとつ見当たらず、そのため登録に対して躊躇している事業者も多いのが事実。
そこで、少しでもインボイス発行事業者の登録を増やすために、令和5年度税制改正に伴いインボイス制度の一部改正が行われました。
インボイス制度とその問題
インボイスとは何かというと、インボイス発行事業者の登録をした事業者のみが発行できる特別な請求書(適格請求書)のことです。
このインボイスには税率と税額に加え、インボイス発行事業者の証である「事業番号」を記載することになっています。
インボイス制度が導入されると、以降このインボイスでないかぎり、買い手側は原則的に仕入れ税控除が認められなくなります。
となると買い手側としては、仕入れ税控除が適用されないことで利益が減ることを避けるため、取引先には当然インボイス発行を条件づけてくることでしょう。
そこで困るのが年間の売上高が少ない消費税免税業者です。私を含めた多くのフリーランスの方が、これに該当すると思われます。
インボイス発行業者の資格を得るために登録をするということは、同時に消費税納付事業者になることになるので、以降消費税が発生するぶん実質の利益が減少してしまいます。
かといって、クライアントから取引を拒否されてしまったのでは、そもそもの商売が立ち行かなくなってしまいます。
そうなると、結局のところ売上の少ない消費税免税業者は、苦渋の判断の末、インボイス発行業者の登録をする以外の選択肢がなくなるのです。
このことにより、廃業・失業する事業者は、今後増えるであろうことが予想されます。
インボイス制度の4つの改正ポイント
そういった消費税免税業者に対する措置の意味も込めてか、令和5年度税制改正に伴いインボイス制度の一部改正が行われました。
その内容が、以下の4点です。
- 納税額を売上税額の「2割」に軽減(免税事業者からインボイス事業者になった場合)
- 1万円未満の取引はインボイスの保存が不要(一定規模以下の事業者のみ)
- 1万円未満の値引き等の場合の返還インボイス交付の免除
- 登録希望日付でインボイス事業者の登録が可能
この中で最も大きいのは、1つめの「納税額を売上税額の「2割」に軽減(免税事業者からインボイス事業者になった場合)」でしょう。
これについて、次でもう少し詳しく解説します。
「2割特例」で消費税の計算を簡素化かつ優遇
これまでも「簡易課税」方式による消費税の計算を簡素化する方法が用意されていましたが、今回「2割特例」と呼ばれる新たな計算方式が期限付きで認められるようになりました。
この「2割特例」は、免税事業者からインボイス事業者へ、インボイス制度を機に新規登録した事業者にのみ適用されるものです。
これは売上にかかる消費税額から「売上税額の8割」を差し引いた額を「納付税額」とできるものです。
わかりやすく簡略化して例えると、
売上が100万円(消費税10万円)で、仕入れにかかった費用が50万円(消費税5万円)だった場合、収めるべき消費税は10万-5万円で5万円となります。
しかし、この「2割特例」を使うと、売上100万円に対する消費税10万円の2割、即ち2万円を消費税として収めれば良い。
ということになります。
大抵の場合、収める消費税は軽減され、消費税の計算も簡略化されることで、無駄な消費税計算の時間を抑えることができます。
この「2割特例」は「簡易課税」と異なり、事前の届け出は不要ですが、適用期間が決まっており、令和8年末までとなっております。
そのため、一時的にこの「2割特例」を利用したとしても、令和9年以降は「一般課税」か「簡易課税」かを選んで、消費税を納めることになります。
現在免税事業者で、取引先との都合でやむを得ずインボイス事業者へ登録する場合は、「2割特例」を利用して消費税の軽減を行いつつ売上を拡大化を目指し、近い将来は真の課税事業者となれるよう努力すべきということになるでしょう。
まとめ
令和5年10月1日から、ついに消費税のインボイス制度((適格請求書等保存方式))が導入されます。
それに対して、令和5年度税制改正にてインボイス制度の一部が改正されました。
改正ポイントは4点で、
- 納税額を売上税額の「2割」に軽減(免税事業者からインボイス事業者になった場合)
- 1万円未満の取引はインボイスの保存が不要(一定規模以下の事業者のみ)
- 1万円未満の値引き等の場合の返還インボイス交付の免除
- 登録希望日付でインボイス事業者の登録が可能
となります。
この中で最も大きく関係するのが「納税額を売上税額の「2割」に軽減(免税事業者からインボイス事業者になった場合)」でしょう。
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス事業者に登録される事業者は、この「2割特例」と呼ばれる特例を利用して、消費税の軽減と消費税計算にかかる時間削減を行うことが得策と言えるでしょう。
ただし、この「2割特例」は令和8年末までの期限付きの特例なため、以降は「一般課税」か「簡易課税」を選ぶ必要があります。
期間終了までに真の課税事業者となるよう売上拡大を行わない限り、さらなる消費税の負担が想像され、経営にも影響を及ぼすことが考えられます。
いずれにせよこのインボイス制度は、売上の少ない免税事業者にとっては、ありがたくない制度と言えるでしょう。
今後、廃止されることを強く望みます。