遺伝とはいったいどういうこと?メンデルの法則をわかりやすく説明 優劣の法則・分離の法則・独立の法則
親とその子どもとがよく似ていることは多いですが、同じ顔・同じ背丈・同じ性格ということにはなりません。兄弟でも特徴の現れ方が異なったり、祖父母と似た特徴が見られれることもあります。メンデルによって遺伝の法則が発見されるまでは、これらのよく似た現象は「謎」とされてきました。そんな遺伝とメンデルの法則について、わかりやすく説明していきます。この記事を読むと、兄弟でもそれぞれ特徴が違ったり、祖父母と同じ特徴が現れる理由がわかると思いますよ。
もくじ
遺伝とは?
「遺伝」とは、親の特徴が子に伝えられる仕組みのことです。親から子に伝えられる特徴は、外形だけでなく性質や体の働き具合などもあり、遺伝学ではそのことを「形質」と呼んでいます。
生物の細胞のなかにある「遺伝子」が、両親の生殖細胞である卵子や精子を通じて子に伝わることで、形質を子孫に伝えていくことが出来るのです。
親の特徴がどのようにして子に伝わるかを最初に明らかにしたのは「メンデル」という人で、「遺伝学の父」とも呼ばれています。
メンデルについて
メンデルは、オーストリアの僧侶であり植物学者です。
修道院の庭にエンドウマメを植え、種子の形や、サヤの硬さ、茎の高さなど、7つの形質に注目し、親の特徴がどのように子に伝わるかを詳細に観察しました。
そして8年間もの研究を続けた結果、かけ合わせ方によって遺伝にはある法則性があることを発見したのです。それを1866年に「植物雑種の研究」という論文にまとめて発表しましたが、残念なことにメンデルの発見を理解する者は1人もいませんでした。
メンデルの死後数十年が経った1900年、オランダのド・フリース、ドイツのコレンス、オーストリアのチェルマックといった3人の科学者により、「メンデルの法則」が改めて見直され、遺伝の謎が急速に解明されていきました。
それ以来、メンデルは「遺伝学の父」として有名になりました。
メンデルの法則
メンデルの発見した遺伝法則は、
- 優劣の法則
- 分離の法則
- 独立の法則
の3つからなり、遺伝を学ぶにあたってきわめて重要なものとされています。
ざっくりと説明すると、
「優性の法則」とは、「形質には優性(表現型が現れ易い遺伝子)と劣性(現れにくい遺伝子)とがあり、同時に存在した場合は優性の形質のみが現れる」という法則です。
「分離の法則」は、「両親から受け継いだ2対の遺伝子は融合せず、次の代に伝わる際には分離する」というもの。
「独立の法則」は、「2つ以上の異なる形質は、それぞれ独立して遺伝する」というものになります。
もう少しく詳しく、それぞれの法則について解説していきましょう。
優劣の法則
優劣の法則とは、ある形質について、優性の遺伝子と劣性の遺伝子があり、優性の遺伝子の特徴が現れることを意味します。
エンドウマメの遺伝子の場合、丸い種子は優性の形質で、シワの種子は劣性の形質なので、丸い種子の遺伝子とシワの種子の遺伝子をかけ合わせると、丸い種子の形質が現れます。
同様に、種子の色では、黄色が優性・緑色が劣性、花の色では、紫色が優性・白が劣性、背の高さでは、高いほうが優性・低いほうが劣性という結果になりました。
ちなみに、ここでいう優劣とは、どちらの遺伝子の方が優れてるかという意味ではありません。
分離の法則
分離の法則とは、配偶子を形成するときには、対を成している遺伝子は1:1に分離するというものです。
丸い種子をつくる遺伝子(優性)をA、シワの種子をつくる遺伝子(劣勢)をaとすると、丸い種子をつくる親はAAという遺伝子の対、シワの種子をつくる親はaaという遺伝子の対を持っていることになります。
この二つが交配したとき、産まれてくる子は第1世代(F1)と呼ばれの遺伝子はAa・aAとなり、丸い種子を作ります。
このF1同士を交配させると、第2世代(F2)ではAA・Aa・aA・aaの4通りの組み合わせとなり、AA・Aa・aAの優性遺伝子を持つものは丸い種子をつくり、劣性遺伝子のみを持つaaはシワの種子を作ります。
独立の法則
独立の法則とは、複数の形質に注目したとき、それぞれの形質の遺伝は独立して、優性の法則と分離の法則を現すというものです。
つまり、エンドウマメの種子の形(丸・しわ)と背の高さ(高い・低い)など、対立形質の遺伝子が複数関わる場合、形を決める遺伝子と色を決める遺伝子は別々であり、「独立している」ということです。
そのため「丸で背が高い」「丸で背が低い」「しわで背が高い」「しわで背が低い」と遺伝する特徴のバリエーションが増え、「背が高いエンドウは豆はしわになりやすい」ということは起こらないということになります。
まとめ
遺伝とは、「親の特徴が子に伝えられる仕組み」のことで、「メンデルの法則」は特徴がどのように伝わるのかという、遺伝の謎を解明したという話でした。
人間は6~10万種類の遺伝子をもつといわれていますが、正確なことはまだ分かっていません。
体は遺伝情報をもとに作られていて、遺伝情報から体の特徴・体質・これからかかる病気などが、ある程度分かるようになってきました。
これだけ多くの研究が日夜行われていますが、まだわからないことだらけというのも、「生命のふしぎ」を感じますよね。
もっとこういった謎について、世界中で協力して解明できる環境を作っていきたいですよね。