給食業者が給食事業を停止したらどうなる?破産手続きに陥った構造的な問題とは?
給食業者が経営危機に陥り、破産手続きをするまでになってしまった経緯は、現在の受発注のしくみが影響しているかと思います。
多くの公立小中学校では、給食が提供されています。
その給食は民間企業からの提供で、調理も民間企業の従業員が行っていますが、昔は「給食調理員(公務員の身分)がやっていたはずです。
これは行政の民間委託の一貫が背景にあります。
面倒臭いことは民間に丸投げっちゅーやつです。
そこで今回は、給食事業のしくみについて改めてチェックして、今回の問題を挙げてみました。
もくじ
給食停止は約80ヵ所
今回は、とある事業者が給食を停止したため、約80ヵ所の学校や公共施設で、給食が提供されないことが明るみになりました。
破産手続きを行えば、全契約数である全国150ヵ所の学校や施設での給食の提供が、完全ストップとなるでしょう。
これは学校や施設にとっては、非常に大きな問題です。
いや、これから給食の民間委託自体が成り立つのかという、しくみの見直しも迫られる可能性はあります。
どちらにしろ、現状の給食事業について簡単に説明します。
学校給食のしくみ
学校給食のステップとしては、
- 献立の作成
県職員である給食センターの栄養士が献立委員会で審議して決定 - 食材料の仕入れ
市町村が調達 - 調理
民間の調理員 - 検食
給食センターの責任者 - 配送
民間の配送業者 - 学校での提供
校長による検食、教師による給食指導 - 食器の回収
民間の配送事業者 - 食器の洗浄ほか
民間の調理員
となっており、運営の責任は教育委員会です。
自治体によって委託する業務範囲、役割分担は異なりますが、大体、給食の調理と付随する業務が、丸投げに近い感じで契約することが多くなっています。
丸投げとは言っても、実質的には部分的丸投げで、市町村と民間企業が連携して給食を提供しています。
企業のジレンマ
給食事業を展開する企業としては、学校給食の事業は比較的安定した収益を挙げられるビジネスです。
規模の大小はありますが、委託されれば、向こう数年は安定した収益が見込めます。
数百食から数千食を委託されるわけですが、あくまでも自治体の事業ですから入札が基本です。
つまり市町村としては安い委託料で任せたい、企業側は少しでも利益を確保したいというせめぎ合い。
だがしかし、結局は安くて信頼のおける業者に決まりがちなわけですが、
- 献立
- 食材料の調達
ということを自治体が握っています。
民間企業が好き勝手に作っていいものではありません。
さらに、例えば野菜の価格相場が上がったとしても、今日に給食における予算は増額されませんから、必然的に予算内でなんとかやりくりします。
やりくりというのは、
- 量を減らす
- 一品減らす
- 食材のレベルを落とす
- 委託料を見直す
ということです。
利益ひっ迫の原因
今回の問題は、食材料の価格相場の向上による企業の利益のひっ迫ではないかと、推測しています。
破産手続きを予定している企業は、恐らく赤字が続いていたのでしょう。
作れば作るほど赤字ということで、ビジネスとして成り立たなくなってしまったわけです。
食材料だけでなく人件費、光熱費も上がったところで、企業側は値上げができないわけですから、作り損になります。
当然、自治体や学校に価格転嫁なんてものは期待できません。
給食費が上がります、なんて、今の保護者は喚き散らかすでしょうからね。
給食費未納は多い
これは実際に聞いた話です。
とある公立小学校では6年間、給食費を払わなかった家庭があり、その兄弟についても在校中は払っていないとのこと。
督促は誰がやると思います?
学校事務、または担任ですよ?
できるわけがないですよ、このレベルの悪質な未納は。
弁護士を通じて、自治体が動かないとムリなので、完全に泣き寝入りなのが現状です。
このような問題も給食事業にはあります。
まとめ
「給食業者が給食事業を停止したらどうなる?破産手続きに陥った構造的な問題とは?」というテーマで、給食について書きました。
昔より給食の献立って、かなり種類が増えています。
四季折々の旬な野菜を使う、地域の郷土料理をヒントにする、それでいて原価と手間が上がっても利益は減るわけですから、民間企業もやってられません。
ましてや給食費を未納とする不届き者がいるわけです。
もう給食なんて止めてしまったら、ありがたみが再確認されますよ。
参照
学校給食など「給食業界」動向調査(2022年度) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]