衰える記憶力の抑止に脳トレは必要?歳を取ると記憶力は低下する?必要なのは記憶を引き出す力

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歳を取ると記憶力は衰えると言われています。そのため衰える記憶力の抑止に脳トレを行おうと思っている方、ちょっと待ってください。記憶力についてもう少し理解するとともに、衰えてきているのは何なのかをよく理解しないと、無意味な脳トレを行うことになりかねませんよ。ということで、ここでいちど加齢と記憶力について少し考えてみましょう。

歳を取ると記憶力は低下するって本当?

以前より、「歳を取ると記憶力が低下する」という話は、よく耳にしてきました。実際、年令を重ねていくに連れ、「以前よりも記憶力が悪くなったな」と感じることがあるのも事実です。

しかし最新の研究によると、「記憶力と年齢」には相関関係はないことがわかっているそうです。

ではなぜ記憶力が悪くなったと感じるのでしょうか。実はこれにはいくつかの理由があります。

1つは若い頃と現在との「情報量」と「時間感覚」の違いです。

子供の頃に得る知識や情報量は、生まれて数年間と、まださほど多くの情報が脳に蓄積されていません。

しかし長い時間生きてくると、その人生の分だけ多くの情報が脳に入ってきています。

脳の海馬という場所では、そんな情報をふるいに掛けています。

例えば、あまり使われない情報や印象の薄い情報などは、半年くらいで海馬から消されるようにできているのです。これは大人同様、子供でも同じです。

海馬は短期記憶から長期記憶へと情報をつなげる中期記憶を担う場所で、起きたできごとや学んで覚えたことなどを、いったん海馬にファイリングし、それを先ほど説明したようにふるいにかけ、重要なものは整理整頓して長期記憶の保存先となる大脳皮質へ送られます。

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大人と子供の「情報量」の違い

大人は子供と比べて行動範囲が広く、日々入ってくる新しい情報の量が子供より多いです。

そのため脳の海馬で「記憶する必要なし」と判断される情報量も多く、印象の薄い情報やできごとは海馬からも消されますし、長期記憶としても残りません。

なので、子供に「あんな事あったよね」と言われても、「そうだっけ?」となってしまいがちなのです。

「時間感覚」の認識のズレ

また、大人になってからの1年と、子供の頃の1年とでは、子供の頃の方がうんと長く感じたかと思います。この様に大人と子供の時間感覚にはズレがあります。

子供にとっての1年前はずいぶん昔のことですが、大人にとっての1年前はつい最近のことと認識しがちです。

なので自分にとってはつい最近と感じる「1年前のことが思い出せない」となるのですが、子供だって1年前のことは忘れていたりします。

ただこれを最近のことと思うか、昔のことと思うかの認識の違いがあるだけなのです。

つまり、大人になるとそれなりに時間が経っていることも「最近」と認識しているが故に、自分の物覚えが悪くなったと感じてしまうのです。

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刺激に対する慣れ

また、子供の頃は多くのことをまだまだ知らなかったり、経験も少ないですから、日々起こるできごとがいちいち刺激的だったりします。

しかし大人になると、これまでの人生で様々な経験をしてきますから、子供と同じ経験を大人がしてもさほど刺激的ではなかったりします。

そのために、子供と比べて海馬に残りづらかったりします。海馬に残らないと当然記憶にも残りませんから、子供に「あんなことあったよね」と言われても、「そうだったかなぁ」となることが多いのです。

必要なのは記憶を引き出す力

記憶には新たに覚えるだけでなく、頭の中にある記憶を引き出す力が重要です。

例えば芸能人や古い友だちの名前が思い出せない、といったことがあると思います。知っているはずなのに思い出せないものです。

これはつまり、記憶しているはずなのに、引き出せない・思い出せないということです。

実は歳を重ねて問題となるのは新たな記憶力・暗記というよりも、脳内にあるはずの記憶が引き出せないがために、「覚えていない」となることが増えてきます。

多くの人が「覚えられない」ことと「思い出せない」こととを「記憶力」という言葉で一緒くたにしてしまっているようですが、歳を取って難しくなるのは、「覚えられない」ことではなく「引き出せない」「思い出せない」ことです。

つまり「記憶力と年齢」には相関関係はないと言われているのは、新たなことを覚える記憶に関してで、歳を重ねていくと脳内の何処かに記憶されていることを引き出す力については、放っておくと徐々に衰えてきます。

そのため脳トレでも、短期記憶を鍛えるトレーニングではなく、すでにある記憶を引き出すトレーニングが重要となってきます。

ただ単純に脳トレしているから大丈夫ではなく、脳のどこのトレーニングをしているかを意識して行うことが大事で、特に中高年の脳トレには「記憶を引き出す」脳トレを行う必要があります。

記憶を引き出す力を鍛えるには

脳の中に格納された長期記憶を引き出してくるのも、実は海馬の仕事です。

しかしその海馬の細胞は他の部位よりも減りやすく、海馬の細胞が減ると脳内の記憶は上手く引き出しずらくなってきます。

また、海馬はストレスにも影響を受けやすい部位であり、配偶者の死といった大きな悲しみに会うと、人は「一気にボケた」「一時的に記憶を失った」というようなことが、こうした大きなストレスにより起こるほどです。

記憶を引き出す力を鍛えるには、

  • 不安ごとを紙に書き出す
  • 頭の中のゴミを吐き出す
  • 新たなことにチャレンジする
  • 少しややこしいことに挑戦する
  • 眼の前のことに集中する・心を込める
  • ぼーっとする時間を作る
  • 瞑想・マインドフルネス
  • DHAやEPAを含んだ食べ物の摂取
  • 地中海食

といったことを行うと良いようです。

これは海馬の萎縮を抑え、再生することに有効と言われていることです。

海馬が萎縮し始めるとされる30歳くらいからは、これらに気をつけて生活すると、記憶が引き出しずらいということが少なくなるでしょう。

まとめ

「歳を取ると記憶力が低下する」のは、「情報量」と「時間感覚」によるある種の勘違いです。

最新の研究によると「記憶力と年齢」には相関関係はないとされています。

ただしこれは新たになにかを覚える記憶・暗記に関することで、歳を取ってから大事となってくるのは、記憶していることを「引き出す力」の衰えです。

この記憶を引き出す力の衰えは、海馬が萎縮することによって起こります。海馬の萎縮は30歳ころから始まるとされているので、これを防ぐことが記憶を引き出す力にとっては有効となります。

海馬の萎縮を抑え、再生するには、

  • 不安ごとを紙に書き出す
  • 頭の中のゴミを吐き出す
  • 新たなことにチャレンジする
  • 少しややこしいことに挑戦する
  • 眼の前のことに集中する・心を込める
  • ぼーっとする時間を作る
  • 瞑想・マインドフルネス
  • DHAやEPAを含んだ食べ物の摂取
  • 地中海食

といったことを行うと良いようです。

また、海馬は脳の中で最もストレスに弱い箇所なので、ストレスを溜めない・受けない工夫を普段から試みる必要があります。

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